第107回全国高校野球選手権奈良大会 勝ち上がり
2回戦 10-0連合A(5c)
3回戦 10-0磯城野(6c)
準々決勝11-0御所実(5c)
準決勝 6-4奈良大附
決勝 3-2智辯学園
5試合合計 40得点/6失点
※1試合平均 8.0得点/1.2失点
大会通算 投手・打撃成績

春季大会で層の底上げ・系統パターンが確立された投手陣を、上位を中心に破壊力抜群の打線が支え夏を勝ち上がった。初戦~準々決勝までは3試合連続二桁得点&完封コールド勝ち、準決勝・決勝は2点差以内の接戦を制して優勝。3年ぶり30回目の夏の甲子園出場を決めた。この115代は秋・春・夏と全ての奈良大会で優勝を果たし、新チーム発足以降奈良県内無敗の15連勝で春夏連続となる甲子園へ進出することとなった。
<打線>
5試合40得点、チーム打率.373。全試合で本塁打を記録し計7本塁打と数字上は強打が目立つが、点の取り合いも接戦も勝ち切る。特に準決勝の二死からの逆転、決勝のワンチャンスをものにしての逆転等、取られた直後に取り返すここ一番での繋がりと勝負強さが際立つ。
昨秋は犠打飛を絡めた着実な進塁、今春は盗塁を絡めての積極的な攻めで勝ち進んだが今夏は犠打飛・盗塁ともに少なく打って繋ぐ形で勝ち抜いた。藤原監督が「夏は攻撃重視で戦う」と宣言した打線は1番に冨田、2番に伊藤と選抜までクリーンナップを務めた打者を上位に配置、この超攻撃型打線が機能した。特に”新1・2番”の冨田・伊藤が大当たり、1番冨田は準決勝まで4試合連続の本塁打、夏の奈良大会新記録となる4本の本塁打はいずれも試合の流れを引き寄せる一発だった。2番伊藤も2試合連続本塁打含む10安打、全試合安打でチームトップの打率.556と強打の繋ぎ役として流れをもたらす。主に5番に座る永末の巧打は安定しこの夏も打率.500でチャンスを創出。1年生からレギュラーの3番赤埴・4番下坊は厳しいマークで打率は振るわずも聖地の大一番でその打棒が爆発するか。下位に目を移しても勝負強い打者が揃う。主に左翼で全試合出場の吉田は決勝で3安打の固め打ち、捕手石井も打率4割強で長打もあり。エースの松村は打力も出色で決勝で逆転の3点本塁打、春も2本塁打の強打は監督も認める。3試合にスタメン出場した2年生金本も打率5割とシャープな打撃、内外や守れるユーティリティ性も光る。
赤埴・永末・下坊・伊藤・冨田・吉田・石黒と前チームでの経験者を揃える打線の層は厚く、力強さに勝負強さも加わり、上位から中軸・下位から上位へと繋がりを見せる。
<投手>
春季大会同様、全試合3投手以上の継投で勝ち上がった。今夏も6人が登板、継投パターンを5,6を有するという投手陣は、5試合で6失点も自責点は4、チーム通算で防御率1点弱と強力で”守り勝つ”天理野球の中心的存在となった。
松村は春に続いて背番号1を背負い3回戦・準決勝・決勝の3試合に先発、先制を許しても大崩れしない。下手投げから変化球を巧みに操り打たせて取り、防御率2.25の安定感で試合を作る。春季大会決勝・奈良大附戦のノーヒットノーランで一躍有名となった橋本は2年生左腕。左横手投げで球の出どころ見にくいフォームは打者のタイミングを取らせず、準決勝・決勝では回の途中からピンチを押さえ相手の流れを断ち切った。ストライク毎に見せる気迫、春近畿大会智辯和歌山戦で苦戦した面影は一切ない別人の投球だった。選抜以降最も成長し、春以降投手陣の中心的存在になったのが2年生右腕長尾、今夏はチーム最多4試合に登板した。ハイライトは準決勝と決勝のリリーフ。準決勝奈良大附戦は二死3塁、決勝智辯学園戦は7回一死満塁から登板し、それぞれピンチを抑え切った。変化球・威力ある直球ともとにかく制球が良く、緊迫の場面でも変わらず腕を振る強心臓の投球がチームを何度も救った。3年生右腕酒井、2年生左腕新井、選抜までのリリーフエース伊藤もポイントで登板しそれぞれ無失点。絶対的エースはいなくとも全員で繋ぎ一丸で勝ち抜くというのが今年のスタイルだ。昨秋をポテンシャル高い下坊・伊藤で勝ち進み、春で層を厚くするとともに継投パターンを確立、集大成の夏で投手それぞれが強みと力を発揮し見事頂点を極めるという形で結実した。
先制を許してもしぶとく追いつき追い越す、ピンチを迎えても最少失点で切り抜ける。選手個々の能力や経験値に加えて、簡単には相手に流れを渡さない精神的強さが大会終盤に際立った夏。”守り勝つ野球”というチームのスタイルは完成形に。選抜の悔しさを胸に秘め、投打に厚みを増して聖地に帰ってくる。前回出場の2022年夏は2回戦敗退。今年で節目の30回目出場を果たし、次は節目の甲子園通算80勝、そしてその先へ。
春夏連続の甲子園では春の忘れ物、前回以上の成績、そして日本一を目指し戦う。