勢いに乗る初出場校を相手に猛打爆発、選抜の悔しさ晴らす圧巻の勝利
※記事の読みやすさを考慮し選手名は敬称略とさせていただきます
第91回全国高校野球選手権大会・1回戦
大会2日目第3試合 天理−南砺福野(2009年8月11日)
1.両チームについて
2.試合について
3.まとめ
1.両チームについて
天理
この年春夏連続、夏は3年ぶりの出場となった甲子園。このチームは前年秋の近畿大会を優勝、神宮大会準優勝。充実の戦力で優勝候補の一角として選抜出場するも、初戦で早稲田実業に3−4の9回サヨナラ負け。相手投手の継投の前に打線が振るわず悔しい結果となった。選抜後はチームとしてもなかなか波に乗れない状態が続いた。中心選手の調子が上がらず、選抜からスタメンをガラリと変えて戦った春季大会。初戦こそ11-0と完勝するも2回戦は奈良大付に6−0と完敗、秋の快進撃から一転どん底を味わった。また新型インフルエンザの流行により春季近畿大会が中止になるなど、部の活動も思うように進まない中で最後の夏の大会を迎えることとなった。
しかし夏の天理はモノが違う。「全国制覇」を目標に掲げ仕切り直しを図ったチームは再び躍進を見せた。ノーシードからの戦いとなった夏は初戦から3回戦まで投打に噛み合い快勝。その後準々決勝は高田商業に2−1、準決勝は一条に8−5の逆転勝ち。決勝は森本監督最後の采配となる郡山を相手に怯むことなく自分達の野球を展開。序盤4回までに10安打6得点を奪い主導権を握ると、先発したエース中山が14安打を浴びながらも2失点完投。7−2と快勝し3年ぶり24回目の夏の甲子園出場を掴んだ。強打発揮の一方苦しい戦いも続いた奈良大会だったが、高田商戦の西浦の勝ち越し弾、一条戦の大西の逆転満塁弾など、勝負どころで効果的な一発も出て、天理らしい粘り強さを発揮し優勝を掴んだ。
新チーム以降安定した巧打と堅守が光る原田。この夏21打数17安打.810と脅威的な打率を記録した4番西浦(現ヤクルト)。複数の投手を巧みにリードし打っては満塁本塁打3本を放った5番大西。前年秋まで4番で一発もある長身内野手西川ら3年生。ここに前年秋から中軸に座るサード安田、春以降メキメキと力を付け、夏は背番号15ながら3番センターで打率.500の活躍を見せた中村(現ロッテ)ら2年生の強打者を揃えた天理らしい大型チーム。投手陣は右のエース中山にリリーフで活躍した田渕、2年生左腕沼田の継投で奈良大会を勝ち上がった。奈良大会決勝の後チーム内に新型インフルエンザが流行しやや調整不足が懸念されたが、6試合でチーム打率.378、この夏息を吹き返した強力打線で再び甲子園に臨んだ。
南砺福野
富山大会を初優勝し、春夏通じて初めての甲子園出場を掴んだ公立校。この夏の富山は選抜で1勝を挙げた富山商業、前年夏優勝の高岡商業が有力とされていた。南砺福野は過去県8強は何度もあったが準々決勝が一つ大きな壁となっていた。1回戦スタートとなったこの夏は投打に噛み合い勝利を重ね、勝負の準々決勝は桜井相手に5−4と接戦を制し、夏は2000年以来の9年ぶりに準決勝に進出。その後準決勝氷見戦を快勝し学校として初めての決勝進出を決めると、決勝戦の相手は高岡商業。前年夏の甲子園経験メンバー擁するこの夏の優勝候補だった。
決勝は高岡商が優位に試合を進め、8回まで終わって4−1のビハインド。打線は高岡商先発鍋田の前に8回まで2安打に抑えられていた。しかしドラマは9回にあった。鍋田から9回表に3長短打で一挙4点をあげ5−4と試合をひっくり返すと、9回裏二死満塁のピンチを抑えて優勝。優勝候補筆頭に対し大逆転勝利を収め夏の甲子園出場を手にした。
2年生エース上田が投打の中心で、投手陣はこの上田に加え盛田、山田を含めた3投手で富山大会を勝ち上がった。チーム打率は.239で本塁打1本だが、勝負所の集中打が光りつながりを見せる打線でついにこの夏初めて甲子園出場まで駆け上がった。
2.試合ついて
開幕直後から続く雨の影響で、予定より二日ずれ込んだこの試合。天理沼田、南砺福野上田の両2年生の先発で開始した。
1回表の南砺福野の攻撃を天理沼田が難なく抑えると、1回裏に天理の猛攻が炸裂。1番徳山が四球を選んで出塁すると、2番原田のところでキャッチャー悪送球により1塁ランナー徳山が一気に3塁まで進塁。思わぬ形であっという間にチャンスを迎えると、一死となった後3番中村がレフト前に弾き返し天理が先制。浮き足立つ南砺福野バッテリーにもつけ入り、打者3人であっという間の先制となった。その後一死1.2塁から5番大西、6番安田の連続タイムリーで2点追加。一死満塁から2つの押し出し、2塁ゴロエラー、左犠飛で追加点し、初回4安打7得点。立ち上がりが落ち着かない南砺福野に対し天理打線は積極的にフルスイングし、盗塁も絡め畳み掛けた。
途中反則投球も取られた南砺福野の上田はなかなか自分の投球をできず2回を投げて交代。天理は3回裏にも2番原田のタイムリー、3番中村の中越タイムリー二塁打で2点を追加。4回裏にも2番原田のタイムリーで1点追加。4回までで10−0とリードを奪い大勢を決した。
5回表には南砺福野が内野ゴロの間に1点を返しついに甲子園初得点を記録。一矢報いたところで反撃に向け立て直したかったが、その後の継投も天理打線を止めるに至らず。6回裏に4番西浦、5番大西の連続タイムリーで2点。7回裏に2番原田、3番中村の連続二塁打、4番西浦のタイムリーで2点。8回裏に9番立花のタイムリー内野安打で1点。天理打線は大量リードにも終盤まで攻めの手を緩めることはなかった。
天理は7回から右の田渕投手にスイッチし南砺福野打線を1失点に封じる。富山大会決勝を逆転で制した南砺福野打線もこの試合はほとんどチャンスを作らせてもらえず。9回表も田渕が締めて試合終了。15−1で天理が勝利、本塁打こそないものの4本の二塁打を含む16安打15得点、5盗塁も絡めた隙のない攻めで圧倒。悔しい結果に終わった選抜の思いを晴らす、3年ぶりの夏の甲子園での勝利だった。
南砺福野(富山)
000 010 000-1
702 102 21X-15
天理(奈良)
(南)上田、金田、上田、盛田、山田裕、中山-高山
(天)沼田、田渕-大西
3.まとめ
夏3年ぶりの出場となった天理が、富山の初出場・南砺福野に対し持ち前の強打を発揮し圧倒。富山大会決勝を逆転で制し勢いに乗る南砺福野だったが初回7失点から勢いを作ることはできず、初めての甲子園は力の差を見せられる戦いに。
大柄な選手が多く、強打者を揃えた大型チームだった2009年の天理。なんと言っても打率.810の4番西浦選手はこの試合注目の存在であり、当時の熱闘甲子園では「古都の安打製造機」とも。この試合でも5打数2安打2打点とその力の片鱗を見せた。
しかしこの試合で”8割男”となったのは西浦選手ではない。2番原田選手が5打数4安打3打点、3番中村選手が5打数4安打3打点と、なんと二人もいた”8割男”。この試合は上位を中心に満遍なく安打・打点を記録しつながりを見せた天理打線だったが、この二人で8安打6打点3二塁打、その活躍は特筆すべきものがあった。
ズラリと揃う強打者は先述の通り、複数投手も揃えた充実の戦力に、当時の森川監督の細やかな采配が相まった隙のない野球が印象的なチーム。一方で新型インフルエンザによる調整難、そして初戦後の主力選手の怪我など外的要因に影響されてしまった点は残念でした。天理はこの2009年から2010年代前半において大型チームで春夏に渡り甲子園出場を続けるわけですが、そんな”プチ黄金期”における始まりの年がこの2009年。往年の打棒天理のような魅力的なチームカラーがその後の世代や中学生球児に影響を与えたものと思います。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました!
それではまた!ガッツ天理🟣⚾️!!